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「もう限界…」共働きワンオペの私が夕食作りをやめた日。罪悪感の呪縛から解放された物語

「ママ、お腹すいたー!」

保育園から引き取ってきたばかりの5歳の息子の声が、やけに遠くに聞こえる。時計の針は19時を指し、隣では2歳の下の子がぐずり始めている。私の手には、スーパーで買った食材の入った重い袋。そして心の中には、鉛のような疲労感。

キッチンに立った瞬間、目の前が真っ暗になった。シンクには朝の洗い物がそのまま。まな板を出す気力さえ、どこにも残っていない。フルタイムの仕事を終え、保育園を2ヶ所ハシゴし、嵐のような子供たちとの帰路を乗り越えた後には、もう何も残されていなかった。

> (…もう、無理かもしれない)

夫は今日も終電帰り。頼れる人は誰もいない。この絶望的な状況で、私はこれから、二人の子供たちのために栄養のある温かい食事を作らなければならない。

その日、私はついに、夕食を作るのをやめた。

この記事は、かつての私のように、共働きとワンオペ育児の狭間で食事作りに心身をすり減らし、「限界」を感じているあなたへ向けて書いています。これは、私が罪悪感という名の重い呪縛から解き放たれ、本当の意味で家族の笑顔を取り戻すまでの、泥臭くて、正直な物語です。

私も頑張った。でも、全てが空回りだった「努力の墓場」

「限界」だと感じる前に、もちろん私もあらゆることを試しました。世の中の「できるワーママ」たちがやっていると言われる、あらゆる方法を。

夢と消えた「週末の作り置き」

最初に試したのは「週末の作り置き」でした。インスタグラムで見るような、色とりどりの常備菜がタッパーに並ぶ光景に憧れていました。「これをやれば、平日の私が楽になるはず!」

土曜の朝、子供たちを夫に任せて意気揚々とキッチンへ。しかし、現実は甘くありませんでした。下ごしらえだけで午前中が終わり、煮たり焼いたりしているうちに、子供たちの「遊んでー!」コールが鳴り響く。結局、一日がかりで5品作るのがやっと。貴重な週末は、新たな「労働」の場と化しました。

> (休むための週末、なんで私、こんなに疲れてるんだろう…)

そして、頑張って作った作り置きも、週の半ばにはなくなり、木曜日にはまた絶望がやってくる。疲労困憊して費やした週末の努力は、あまりにも儚く消えていきました。

時短のはずが…「時短レシピ」の罠

次に手を出したのは「時短レシピ」です。15分で完成!包丁いらず!といったキャッチーな言葉に惹かれ、毎晩スマホでレシピを検索する日々。しかし、これもまた、新たなストレスを生み出しました。

  • 「家にない調味料が出てきて、結局作れない」
  • 「『下味冷凍しておいた鶏肉』…って、その下準備の時間はどこにあるの?」
  • 「レシピを探している間に、子供がぐずり始めて、結局何も進まない」

時短レシピを実践するには、それを使いこなすだけの気力と「段取り力」が必要だったのです。バッテリー残量1%の私には、新しいOSをインストールするようなものでした。

> (どうして、みんなは普通にできているのに、私だけがダメなんだろう。私が母親失格だから…?)

努力すればするほど、できない自分を責める。キッチンはいつしか、私の無力さを証明する「努力の墓場」のようになっていました。

涙も出なかった夜、私を救った「キッチンの水漏れ」という気づき

私が夕食作りをやめた日。結局、その日は子供たちにレトルトのカレーを食べさせ、自分は立ったまま、キッチンの隅で食パンを一枚かじりました。味なんて、全くしなかった。

虚無感の中で、ふと、ある例え話が頭に浮かびました。

それは「キッチンの水漏れ」の話です。

> もし、キッチンの床が水浸しになっていたら、あなたはどうしますか?

多くの人は、必死に雑巾で床を拭き始めます。一枚、また一枚と新しい雑巾を持ってきて、溢れる水を吸い取ろうとする。でも、蛇口の元栓が壊れて水が漏れ続けている限り、いくら床を拭いても、永遠に終わりません。雑巾はすぐにびしょ濡れになり、やがて力尽きてしまうでしょう。

その時、気づいたんです。

「週末の作り置き」も「時短レシピ」も、床を拭くための「雑巾」でしかなかったんだ、と。

私が本当に向き合うべきは、床に溢れた水(日々の食事作り)ではなく、水漏れの原因そのもの。つまり、「母親なのだから、子供のために栄養のある手料理を毎日作るべきだ」という、私の頭の中に固くこびりついた「壊れた蛇口」だったのです。

この蛇口を締めない限り、どんなに高性能な雑巾を手に入れても、私は永遠に救われない。そう確信した瞬間でした。

私が「壊れた蛇口」を締めるためにやった、たった3つのこと

「もう、床を拭くのはやめよう。蛇口を締めに行こう」

そう決意してから、私の行動は大きく変わりました。罪悪感と戦いながら、でも、自分と家族の未来のために、3つのステップを踏み出しました。

STEP1: 「作らない」と決める勇気を持つ

最初のステップは、何よりもまず「私は今日、夕食を作りません」と自分に許可を出すことでした。これは、想像以上に勇気がいることでした。頭の中に「ダメな母親」「可哀想な子供たち」という声が響きます。

でも、私はその声にこう言い返しました。

「鬼の形相でイライラしながら作ったご飯と、笑顔で『おいしいね』って言いながら食べるお惣菜、子供はどっちが幸せ?」

完璧な栄養バランスよりも、母親の精神的安定の方が、子供の心にとってはよっぽど「栄養」になる。そう信じることにしたのです。

STEP2: 夫を「戦友」に変えるプレゼン

次に、一番の理解者であるべき夫に、この危機的状況を「正しく」伝える必要がありました。ただ「疲れた、無理」と感情をぶつけるのではありません。これは、我が家というチームを救うための、重要なプレゼンテーションでした。

夫が休みの日に、子供が寝た後で、冷静に、でも真剣に伝えました。

  • 今のワンオペ状態が、私の心身にどれほどのダメージを与えているか(具体的なエピソードを交えて)
  • このままでは、私が壊れてしまうこと。それは家族全員にとっての不幸であること。
  • 「キッチンの水漏れ」の例え話を使い、問題の根本は私のキャパシティオーバーにあること。

そして、彼に「助けてほしい」ではなく「この家族の危機を、一緒に乗り越えるチームメイトになってほしい」と伝えました。彼は私の悲痛な、しかし論理的な訴えを真剣に受け止め、「気づかなくてごめん。どうすればいいか一緒に考えよう」と言ってくれました。

STEP3: 罪悪感を「未来への投資」に書き換える

最後のステップは、外部の力を借りることへの抵抗感をなくすことでした。具体的には、ミールキットや宅食サービス、時短家電の導入です。

比較項目以前の私(手作り信仰)今の私(チーム我が家)変化
平日の夕食必死の手作り( often 惣菜に罪悪感)ミールキット・宅食を週3〜4日活用調理時間 平均15分
心の状態常に焦り、罪悪感、疲労困憊心に余裕、子供と向き合える笑顔が劇的に増加
子供との時間「ちょっと待ってて!」が口癖絵本を読んだり、話を聞く時間親子の会話が増加
夫婦関係不満とすれ違い協力体制、感謝の言葉週末の喧嘩が減少
食費微増微増〜微減(外食が減ったため)心の平穏というプライスレスな価値

確かに、ミールキットや宅食にはお金がかかります。でも、私はそのコストを「食費」ではなく「私の心の平穏と、家族の笑顔を守るための未来への投資」と捉えることにしました。私が倒れてしまうコストに比べれば、ずっと安い投資です。

食事作りをやめたら、食卓に「本当のごちそう」が並ぶようになった

夕食作りを手放して数ヶ月。我が家の食卓は、驚くほど豊かになりました。

もちろん、品数が豊富になったわけではありません。むしろ逆です。でも、そこには以前にはなかった「ごちそう」が毎日並ぶようになったのです。

それは、私の「笑顔」と、家族の「穏やかな会話」でした。

キッチンでイライラしながら時間に追われることがなくなり、心に生まれた「余白」で、子供たちの園での出来事をゆっくり聞けるようになりました。「ママ、あのね…」と話しかけてくる息子の目を、ちゃんと見て相槌を打てるようになりました。

夫も、早く帰れた日には「今日はキットが届いてるから俺がやるよ」と自然にキッチンに立ってくれるように。私たちは、家事の担当者ではなく、家族というチームの「戦友」になれたのです。

先日、息子が言いました。

「ママ、最近ずっと笑ってるね。楽しい?」

その言葉を聞いた時、涙が溢れました。ああ、私が守りたかったのは、これだったんだ、と。子供が見ていたのは、栄養バランスの取れた完璧な献立なんかじゃなかった。ただ、笑っているお母さんの顔だったんだ、と。

よくある質問(FAQ)

ここで、この記事を読んでくださっているあなたが抱くかもしれない疑問に、先回りしてお答えします。

Q1. ミールキットや宅食は、やっぱり食費が上がりますよね?

はい、純粋な食材費と比べれば割高になることが多いです。しかし、我が家の場合、私が疲れ果てて衝動的に買っていたスーパーの惣菜や、週末に「もう作りたくない!」となって利用していた外食が減ったため、トータルで見ると大きな差はありませんでした。何より、時間と心の余裕というリターンを考えれば、十分に価値のある「投資」だと感じています。

Q2. 夫が全く協力してくれません。どうすればいいですか?

とても難しい問題だと思います。私も最初はそうでした。大切なのは、感情的に「なんで手伝ってくれないの!」と責めるのではなく、この記事で紹介したように「このままでは家族が機能不全に陥る」という危機感を、客観的な事実として共有することです。「あなたを責めているのではなく、チームの問題として解決したい」というスタンスで、冷静に対話の場を持つことをお勧めします。

Q3. 子供への栄養面がやっぱり心配です…

その気持ち、痛いほどわかります。最近のミールキットや宅食サービスは、管理栄養士が監修しているものが多く、栄養バランスが考え抜かれています。自分で闇雲に作るよりも、よほどバランスが取れていることさえあります。また、「毎日完璧」を目指すのではなく、週末など余裕のある時に野菜たっぷりの具沢山スープを作るなど、週単位、月単位でバランスが取れていればOK、とハードルを下げてみてはいかがでしょうか。

最後に、かつての私へ贈る言葉

もし、今あなたが、かつての私のようにキッチンで一人、孤独と絶望の中にいるのなら。どうか、これだけは忘れないでください。

あなたは、もう十分に、十二分に頑張っています。

あなたのその頑張りを、一番わかってあげられるのは、他の誰でもないあなた自身です。自分を責めるそのエネルギーを、ほんの少しだけ、自分を許し、労わる方へ使ってあげてください。

完璧な母親になんて、ならなくていい。完璧な食事なんて、作らなくていい。

キッチンという戦場から、一歩だけ、踏み出してみてください。その一歩は、あなたの、そしてあなたの愛する家族の未来を、もっと温かく、もっと優しいものに変える、大きな大きな一歩になるはずですから。

今夜は、帰り道に好きなお惣菜でも買ってみませんか?

それが、あなたの新しい物語の始まりです。